神水公衆浴場 (2020)

竣工: 2020(インテリアデザイン)

掲載: 「新建築 住宅特集」2020年9月号(P56~66); “The new life of a Japanese bathhouse with an art gallery,” Domus (2021年6月4日)

写真: 小川重雄

グラフィックアート: 米村知倫

本プロジェクトは、2016年に起こった熊本大震災の被災地にある個人住宅です。当時、周辺住民が風呂を利用できずに苦労したことを受けて、地域住民が集まり、リラックスし、楽しめる活気あふれる公共の場として、大規模アートを展示した公衆浴場がオープンしました。

ヒノキの三角材を角度を付けてずらしながら並べてキャンバスに見立て、そこにアートを描くことで、元は1枚のシームレスな絵画が、見る角度によって縦に分断されます。利用者が歩いたり、座ったり、伸びをしたり、お湯に浸かったり、湯気に身を浴したり、移動するごとに線はその幅を変化させます。当初は、鉋でルーバーを削り落とし、年を追うごとにそこに様々なアートを展示することを基本コンセプトとしました。

材料は、現地調達、組み立てやすさ、環境への影響を考慮して選定し、同地域で豊富に入手可能なヒノキとしました。ヒノキは耐久性が高く、湿度調整力・寸法安定性に富みます。壁と床は、テラゾ仕上げとし、滑らかな表面とすることにより掃除や維持管理を容易にするとともに、オーガニック調の質感と色味で家屋そのものに使われている木材の温かみが増すよう工夫しました。また、蛇口と手すりに採用した真鍮色は、テラゾの壁面や床面が醸し出す落ち着いた雰囲気の中でアクセントとなっています。